障害年金の請求を社労士に依頼した方がいいケースと依頼しなくていいケース〜その1

社会保険労務士で産業カウンセラーの加賀佳子(@kako_sr)です。障害年金についての生きた情報をブログでお伝えしています。

こちらはもともと移転前のブログに書いたものですが、2015年8月に公開してから約3年間にわたり、一番読まれていた記事になりますので、一部修正し、再掲します。

障害年金の請求も、他の行政手続きと同様、自分でできます。ただ、ときとして、自力で頑張ることが、裏目に出てしまうケースもあります。

手続きの進め方や請求内容により不利益になるケース(具体例)

この記事を書いたきっかけは、1本の相談のお電話でした。

初診日が30年ほど前にあり、その証明が取れないため先に進めず、手続きが頓挫したまましばらく経つが、社労士に相談すると高額の費用がかかるという噂を耳にし、相談することを躊躇しているということでした。

こういったお話を伺うと、とても残念な気持ちになります。同時に、微力ではあっても情報を発信し続けることの大切さをあらためて感じます。

請求が遅れることで不利益になるケース

お電話をいただいた方は、人工透析治療を受けているということで、障害等級自体は間違いなく2級に該当する方です。状況から、事後重症請求となります。

障害年金の請求の種類と方法〜障害認定日請求と事後重症請求

事後重症請求の場合、請求の翌月分からの年金が受け取れます。つまり、請求が遅れれば、その分、本来もらえたはずの年金が消えていきます。

仮に基礎年金で子の加算がない場合、1ヵ月分で約65,000円。半年請求が遅れれば、40万円弱の(本来もらえたはずの)年金が消えます。

20歳以上で受給できる障害年金のしくみと要件についてあらためてまとめてみた

一方、社労士に依頼した場合の報酬は、たいていが年金月額の2ヶ月分で、このケースだと約130,000円。依頼する社労士さえ間違えなければ、ご本人の労力はぐんと減り、しっかりした書類で、より確実に認定が得られます。

初診日の証明が取れず、先に進めないまま何ヶ月も経ってしまった、あるいは年金事務所にも無理だと言われて諦めていたなど、もう少し早く相談いただけていたらと思うケースは少なくありません。請求が遅れることによる損失が、社労士報酬をはるかに上回ってしまっています。

請求が遅れることにより不利益になるのは事後重症請求の場合だけでなく、「初めて1級または2級」による請求、遡及請求で一部が消滅時効にかかる場合も同様です。

障害の程度が実際より軽く認定され不利益になるケース

重度のうつ病で障害年金を受給していたものの、更新の診断書を提出する時期に、その手配をしようという気力がわかないまま数年放置してしまったという方から、診断書の手配や提出等の依頼をいただいたことがあります。ここではAさんとします。

当然ながら年金は差止めとなっており、ようやく提出しよう、しなければと思えるところまでは改善したものの、依然、自力では手配することができないということでした。

Aさんは最初の請求の際、ご家族の力を借りて遡及請求をしており、障害認定日、請求日ともに等級は3級で認定されていました。ですが、医師の診断、処方薬含む治療内容、症状、日常生活の状況など様々な観点からお話を伺うと、どう考えても3級どころではありませんでした。お話を伺った時点での状態も2級相当と思われましたが、障害認定日や裁定請求日の状態は、さらに悪かったということです。

このケースは結果として、差止めになった時点と依頼を受けた時点での2枚の診断書に、診断書を提出しなかった理由や現状等についての申立書を添付して提出し、差止めになった時点から2級の年金が支給されることになりました。

ですが、障害認定日から年金請求日、そして差止めになる時点までの分は、もうどうにもなりません。この間、合計約5年。仮に2級だったなら、家族の加算も含め5年分で約900万円。実際に受給されたのは3級の5年分で400万円。5年分で約500万円の差でした。

これは一例で、ご自身やご家族が自力で手続きをされ、思いのほか低い等級になったり、不支給決定になったということで、初めてご相談いただくことも少なくありません。

不服申立てには期限があり、この期限に間に合う場合には、不服申立てと再度の請求の両面から考えますが、いずれの方法を取るにしても、一度提出された診断書などの書類は、どこまでもついてまわり、場合によっては長い間、請求者の足を引っ張り続けます。

*事例は大筋が変わらない程度にデフォルメしています。

請求手続きをする前に知っておきたいこと

請求する前に(できれば医師に診断書を依頼する前に)特に知っていただきたいのは、次のような点です。

  • 障害の部位や種類に対応する障害認定基準(*)
  • 精神障害では日常生活能力の判定・程度の考え方
  • 内部障害では各疾患に応じた障害認定要領や一般状態区分などの考え方
  • 肢体障害では日常生活動作(ADL)の評価の考え方

(*)障害認定基準は下記、日本年金機構のサイトからダウンロードできます。

参考 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準日本年金機構

こうした「知っていただきたいこと」を中心に、これから少しずつ書いていきたいと思っています。

社労士ができること

診断書を作成する医師は、治療(医学)の専門家であり、障害年金(社会保障・法律制度)についてご専門ではないため、仕組みや認定の考え方などをご存じないことが多いですし、それはある意味、当たり前のことといえます。

年金事務所や市区町村の窓口での対応には限界があります。相談に訪れる方一人ひとりの治療歴や病状など全て聴き取って、個別にサポートするといったことは、行政機関という性質上も困難です。

社会保険労務士ができることは、専門知識と経験をもって、請求者と医療機関、請求者と行政、両方の橋渡しをすることです。

請求までの労力を減らし、一番良いかたちで年金を受給できる可能性が高くなります(=メリット)が、一方で報酬は生じます(=デメリット)。

報酬が高額なのかどうかは、個々の価値観にもよります。それぞれを天秤にかけて考えていただくしかありません。

その天秤のどちらが重くなるかは、ケースバイケースとしかいいようがありません。それぞれの重さの検討をつけるために、まずは相談を活用してほしいと思います。

(少なくとも、相談だけで高額な報酬がかかるということはないはずです)

その2「社労士に依頼しなくていいケース」はこちら↙からご覧下さい。

障害年金の請求を社労士に依頼した方がいいケースと依頼しなくていいケース〜その2