神経症や人格障害で障害年金は受給できるか?〜認定の実際と留意点

社会保険労務士で産業カウンセラーの加賀佳子(@kako_sr)です。障害年金についての生きた情報をブログでお伝えしています。

障害年金の認定基準によると、強迫性障害やパニック障害などのいわゆる神経症や、人格障害(パーソナリティ障害)は、原則として障害年金の対象とならないこととされています。

ですが、はたして全てのケースで認定されないのでしょうか?

原則には例外があります。今回は、神経症や人格障害で障害年金が受給できるケースや留意点などについて書いてみます。

神経症と人格障害の定義

認定対象外となる「神経症」とは

障害年金の認定に使用されているICD-10(国際疾病分類)によると、いわゆる神経症として認定対象外とされている疾患は、おおむね次のとおりです。

  • 恐怖症性不安障害(広場恐怖症、社会恐怖症など)
  • 他の不安障害(パニック障害、全般性不安障害など)
  • 強迫性障害
  • 重度ストレス反応(心的外傷後ストレス障害、適応障害など)
  • 解離性(転換性)障害
  • 身体表現性障害
  • 摂食障害

人格障害(パーソナリティ障害)とは

「精神標準医学」(医学書院)には、次のように書かれています。

その人の置かれた社会・文化のなかで、一個の人格として期待される適切な人間関係が持続的に保てず、社会的機能ないし職業への従事に顕著な制約が長期間続いている社会不適応な行動パターンを指し、本人自身が悩む場合と、当人はその自覚がないまま周囲が悩む場合に大別される。

原則として、明らかな精神障害には至らず、かといって正常な状態からは一定の逸脱を呈し、正常と明らかな精神障害の間の中間的位置を占める。

また、特に相談の多い境界性人格障害については、次のように書かれています。

自我機能の明らかな障害をもち、安定した対象関係が確立されていない、人格障害の中でも重症度の高い障害で、単なる人格障害というより、精神障害の側面をもつ。

情緒の不安定さ、空虚感、不安、苛々、強い抑うつ症状や解離などを伴うことも多く、こうした状態の中で、リストカットや大量服薬などの自傷行為・自殺企図を繰り返すこともあり、一般的に治療の経過もあまりよくなくない(症状が慢性的に続く)とされています。

神経症や人格障害で障害年金を受給できる場合とは

障害認定基準には、次のように書かれています。

人格障害は、原則として認定の対象とならない。

神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。
なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること。

人格障害には、神経症のようなただし書きもないことから、例外がないように見えてしまいますが、そのようなことはありません。人格障害と診断されている場合も、神経症と同様、精神病の病態を示していれば、認定の対象となります。

ところで、この「精神病の病態を示している」とは一体なにをさすのでしょうか。

この点については、明確な定義が示されていないのが実情ですが、認定基準の書きぶりから、ICD-10でいうF2(統合失調症など)やF3(気分障害など)の病状がある場合と考えられます。

具体的にはおおむね次のとおりです。

統合失調症など(F2)

  • 統合失調症
  • 統合失調症型障害
  • 持続性妄想性障害
  • 統合失調感情障害

気分(感情)障害(F3)

  • 躁病エピソード
  • 双極性感情障害(躁うつ病)
  • うつ病エピソード
  • 反復性うつ病性障害
  • 持続性気分(感情)障害

ほか、社会保険審査会の裁決(*)では、強迫性障害単独で支給が認められているケースもあります。ただし、年金機構の段階(最初の請求)ではまず難しく、二審の不服申立てで、ようやく認められるかどうかというところです。

MEMO

年金機構での決定に対する不服申立てとして、社会保険審査官に対して行う一審の審査請求と、社会保険審査会に対して行う二審の再審査請求があります。この社会保険審査会による結論が「裁決」です。

神経症や人格障害で障害年金を請求する場合の留意点

強迫性障害やパニック障害など神経症の診断を受けている場合、まずは主治医に相談してみることをお勧めします。

その上で、統合失調症や気分障害の病状がある場合には、診断書の診断名に併記してもらうか、備考欄に、その病態とICD-10コードを記入してもらいます。

処方薬の種類や量も審査の上での指標になります。抗精神病薬などが処方されている場合、なるべく記入してもらうようにしましょう。記入がない場合は、お薬手帳のコピーを添付するのもひとつの方法です。

参考 精神の障害用の診断書を提出するとき日本年金機構

また、病歴・就労状況等申立書には、神経症や人格障害による症状だけでなく、併発(または病態のある)統合失調症や気分障害などによる症状も、しっかり記入します。

参考 病歴・就労状況等申立書を提出するとき日本年金機構

まとめ

神経症や人格障害が障害年金の対象にならないことについて、法律による根拠は一切ありません。障害認定基準という国の通知により、このような取扱いとなっています。

障害年金は、疾患により仕事や日常生活に一定の制限がある場合の所得保障の制度です。診断名で切り捨てるのではなく、個々の症状や、日常生活への影響で判断されるよう、認定基準自体が改正されることを願っています。

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