知的障害・発達障害による障害年金請求〜その1【認定基準と就労との関係など】

社会保険労務士で産業カウンセラーの加賀佳子(@kako_sr)です。障害年金についての生きた情報をブログでお伝えしています。

知的障害や発達障害で障害年金を請求するとき知っておきたい認定の基準や、請求手続きのポイントを2回にわけて書いていきます。

少し前に、知的障害、発達障害、精神障害全体に共通する「等級判定ガイドライン」について書いていますので、できればあわせてご覧下さい。

精神・知的・発達障害での障害年金請求でおさえておきたい「等級判定ガイドライン」

障害認定基準の例示

障害認定基準では、各等級に該当する状態が、次のように例示されています。

知的障害

  • 1級・・・知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの
  • 2級・・・知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの
  • 3級・・・知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

発達障害

  • 1級・・・発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
  • 2級・・・発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
  • 3級・・・発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの
もうすぐ20歳になる知的障害の子がいます。食事は私が用意してあげれば自分で食べることはできるし、着替えもなども一応自分でできます。そうすると2級にはならないということでしょうか?

社労士 かこ

ここは誤解をまねきそうなところですが、食事や着替えなどの「動作」にも援助が必要かどうかということではなく、たとえば食事を自分で用意できるかなども含めて考えます。
知的障害・発達障害による障害年金請求〜その2【初診日と病歴・就労状況等申立書・診断書のポイント】

なお、知的障害と発達障害を併発している場合には、それぞれ審査されるのではなく、どちらの障害もあわせて総合的に判断されることになります。

就労との関係

等級判定ガイドラインの「総合評価の際に考慮すべき要素の例」では、知的障害や発達障害と就労との関係について、次のように書かれています。

知的障害・発達障害共通

  • 仕事の内容が専ら単純かつ反復的な業務であれば、それを考慮する(一般企業で就労している場合でも、仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する)
  • 仕事場での意思疎通の状況を考慮する(一般企業で就労している場合でも、他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する)

発達障害

  • 執着が強く、臨機応変な対応が困難である等により常時の管理・指導が必要な場合は、それを考慮する(一般企業で就労している場合でも、執着が強く、臨機応変な対応が困難であることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性と検討する)

そのほか、精神障害との共通事項として、次のような内容も書かれています。

  • 就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。
  • 障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。

たとえ障害者雇用であっても仕事をしていると障害年金は受給できないという誤解が根強くあります。

たしかに数年前の一時期、仕事をしているというだけで不支給になったり、受給していた障害年金が支給停止されるという事態が相次ぎました。

ですが、等級判定ガイドラインが運用された2016年より、そのような事態もかなり解消されてきています。

社労士 かこ

大切なのは、診断書や病歴・就労状況等申立書で、就労の実態が認定側に伝わるようにすることです。

その他で参考とされること

就労以外の部分では、次のような要素も審査の参考にされます。

知的障害

  • 知能指数は審査の上で参考にはされますが、それで等級が決定するわけではありません。日常生活の様々な場面での援助の必要度が考慮されます。
  • 発育・養育歴、教育歴などについても考慮されます。
  • 療育手帳の有無や区分が考慮されます。

「軽度の知的障害では受給できない」という誤解もありますが、IQや療育手帳の区分は、あくまでもひとつの目安です。

発達障害

  • 知能指数が高くても日常生活能力が低い(特に対人関係や意思疎通を円滑に行うことができない)場合は、その状態が考慮されます。
  • 臭気、光、音、気温などの感覚過敏があり、そのために日常生活に制限が認められれば、その状態も考慮されます。
  • 発達・養育歴、教育歴、専門機関による発達支援、発達障害自立訓練等の支援などについて考慮されます。
  • 青年期以降に発達障害が判明した場合も、幼少時の状況(発達障害をうかがわせる症状や行動など)は参考にされます。
  • 知的障害を伴わない発達障害は、社会的行動や意思疎通能力の障害が顕著であれば、それが考慮されます。

知的障害・発達障害共通

  • 著しい不適応行動を伴う場合や精神疾患が併存している場合は、その療養状況も考慮されます。
  • 在宅の場合は在宅での援助の状況、施設入所の場合は入所時の状況、一人暮らしの場合はその理由や、一人暮らしになった時期などが考慮されます。
MEMO
上記の「不適応行動」とは、たとえば次のような行為をさすこととされています。

  • 自分の身体を傷つける行為
  • 他人や物に危害を及ぼす行為
  • 周囲の人に恐怖や強い不安を与える行為(迷惑行為や突発的な外出など)
  • 著しいパニックや興奮、こだわり等の不安定な行動(自分でコントロールできない行為で、頻発して日常生活に支障が生じるもの)

まとめ

今回は、認定の基準や就労との関係、どういった点が審査の上で参考にされるのかについて書きました。障害年金の手続きをする前に、ざっくりと把握していただければ幸いです。

次回は具体的な手続方法や留意点について書きます。

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