社会保険労務士の加賀佳子(@kako_sr)です。障害年金についての生きた情報をブログでお伝えしています。
障害年金を請求したけれど不支給の決定を受けたとか、思っていたより低い等級で認定されたといった場合で、決定に納得がいかないときは、「不服申立て」をすることができます。
社労士 かこ
今回から3回に分けて、詳しく解説しますね。
Contents
不服申立て(審査請求・再審査請求)の概要
障害年金に関する不服申立ては、一審の「 審査請求」と、二審の「 再審査請求」の二審制になっています。まずは審査請求をし、ダメだったときには再審査請求に進むかたちです。
日本年金機構に再審査を求めるものではなく、一審は「 社会保険審査官」に、二審は「 社会保険審査会」に対して、「このたび保険者が行った決定は法令に照らして妥当ではないため取り消して下さい」ということを訴え、審査を求める手続きです。
「審査請求」と「再審査請求」。言葉は似ているものの、色々と違いがありますので、それぞれ解説していきますね。
その前に共通事項です。
どんなときに不服申立てができるの?
不服申立ては次のような場合に行うことができます。
- 年金請求に対する決定に納得がいかない(不支給決定や障害等級の不服など)
- 障害状態が悪化したため額改定請求をしたが認められなかった
- 障害年金を受給していたが障害等級が下がった、あるいは支給停止された
社労士 かこ
不服申立ては自分でやらなければならないの?
審査請求、再審査請求ともに、ご本人が行うこともできますし、代理人を立てることもできます。
代理人は、ご家族などのほか、社会保険労務士などの専門家に依頼することもできます。障害年金はただでさえ難しいですが、不服申立てには、より専門知識や経験が求められますので、専門家に依頼することを、本当は一番お勧めします。
社労士 かこ
不服申立てをすると決定された年金はどうなるの?
不服申立てをすることにより、すでに決定された内容が、不利益に変更されることは一切ありません。
たとえば3級と認定された原処分について、2級を求めて審査請求する場合、審査請求中も3級の年金は決定通りに支給されます。
審査請求(一審)の準備
審査請求先と方法
一審の審査請求は、管轄(*)の地方厚生局に置かれる社会保険審査官に対して、通常は郵送により行いますが、年金事務所を通して提出することも可能です。
(*)管轄は次のリンクのうち社会保険審査官所在地一覧表で確認できます。
参考 社会保険審査会における社会保険審査制度の概要厚生労働省審査請求書は書式が決まっています。この書式は、地方厚生局のホームページからダウンロードすることもできますし、社会保険審査官や年金事務所に電話して取り寄せることもできます。
審査請求の期限
審査請求の期限は、原処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内です。
この「知った日」とは、原則、通知が届いた日です。必ずしもご本人が知った日というわけではありません。
ギリギリではなく、なるべく余裕をもって審査請求するようにしましょう。
原処分の理由を知る
なんといっても決定の理由を知ることが、まず第一です。
不支給決定通知書や支給額変更通知書には、”法令の定める障害等級に該当しない”とか、”初診日が確認できない”などと書かれているのみで、なぜそのように判断されたのかということがわかりません
具体的な理由は、最寄りの年金事務所を通じて、年金機構の担当部署(障害年金センター)に確認してもらうことで知ることができます。
より正確に知りたいという場合は、少々手間と時間がかかりますが、認定医が審査の際に作成する「 障害状態認定調書」(厚生年金の場合は「 障害状態認定表」といいます)を、厚生労働省に対して開示請求することができます。
開示請求を郵送で行う場合の手順は次のとおりです。
- 厚生労働省所定の「保有個人情報開示請求書」に必要事項を記入・手数料(300円)の収入印紙を貼付し、身分証明書のコピーと住民票の原本を添付して、厚生労働省大臣官房総務課公文書監理・情報公開文書室に郵送します。
- 通常3週間前後で、ご本人あてに「開示の決定通知書」と「保有個人情報の開示の実施方法等申出書」が送付されます。
- 「保有個人情報の開示の実施方法申出書」に必要事項を記入して郵送します。
- 通常1週間前後で、ご本人あてに、障害状態認定調書(または障害状態認定表)が届きます。
決定の具体的な理由を知った上で、審査請求で取り得る方法や、訴える内容を考えていくことが重要です。
診断書の修正は不服申立てに有効か?
ところで、障害年金の不服申立ての内容を大きく分けると、おおむね、初診日に関するものか、障害の状態(障害等級)に関するものということになります。
このうち障害の状態(障害等級)が争点となる場合に、決定のもとになった診断書を一部修正してもらい、その理由を付記していただいた上で提出する方法について、一部のサイトに書かれていたり、実際に相談を受けることがあります。
ですが、この方法は、残念ながら効果がありません。「決定後に作成された診断書は、審査に採用できない」と扱われてしまうのです(訂正後の内容を明確に裏付けるカルテの記載があり、そのカルテを提出できる場合などは例外です)。
このことからも、最初に提出する診断書がいかに重要なのか、おわかりいただけるかと思います。
まとめ
今回はおもに主に不服申立て全般に共通する事柄と、一部、審査請求について書きました。
次回は一審の審査請求について、具体的に解説する予定です。
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