社会保険労務士で産業カウンセラーの加賀佳子(@kako_sr)です。障害年金についての生きた情報をブログでお伝えしています。
初診日の話の続き、その1です。

前回書いた例示の中で、次のような項目がありました。
- 障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日が対象傷病の初診日
- 傷病名が確定しておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日
今回は、このふたつについて解説します。
初診日の「相当因果関係」とは
ここでの「相当因果関係」とは、「前の疾病または負傷(A)がなかったならば、後の疾病(B)が起こらなかったであろうと認められるかどうか」をいいます。
認められれば相当因果関係ありとして、前後(複数)の傷病を同一(ひとつ)の傷病として取り扱うこととされます。
したがって、この場合、後の疾病(B)の初診日は、前の傷病(A)により初めて医師の診療を受けた日です。
社労士 かこ
たとえば、前の傷病(A)により倒れて頭部を打撲し、障害等級に該当する障害の状態になったとすれば、前の傷病(A)がなければ頭部打撲が起こらなかったしても、両者に相当因果関係は認められず、初診日はあくまでも頭部打撲の日と取り扱われます。
逆に、負傷が原因で、なんらかの疾病を生じた場合は、相当因果関係ありとして、負傷した日が初診日となります。
社労士 かこ
相当因果関係ありと取り扱われることが多い例
- 糖尿病と糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性壊疽(糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉鎖症)は、相当因果関係ありとして取り扱われます。
- 糸球体腎炎(ネフローゼを含む)、多発性のう胞腎、慢性腎炎に罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係ありとして取り扱われます。
- 肝炎と肝硬変は、相当因果関係ありとして取り扱われます。
- 結核の化学療法による副作用として聴力障害を生じた場合は、相当因果関係ありとして取り扱われます。
- 手術等による輸血により肝炎を併発した場合は、相当因果関係ありとして取り扱われます。
- ステロイドの投薬による副作用で大腿骨頭無腐性壊死が生じたことが明らかな場合には、相当因果関係ありとして取り扱われます。
- 事故又は脳血管疾患による精神障害がある場合は、相当因果関係ありとして取り扱われます。
- 肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係ありとして取り扱われます。
- 転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係ありとして取り扱われます。
相当因果関係なしと取り扱われることが多い例
- 高血圧と脳出血又は脳梗塞は、相当因果関係なしとして取り扱われます。
- 近視と黄斑部変性、網膜剥離又は視神経萎縮は、相当因果関係なしとして取り扱われます。
- 糖尿病と脳出血又は脳梗塞は、相当因果関係なしとして取り扱われます。
これらは一例で、相当因果関係の有無が問われるケースはほかにもたくさんあります。
初診医療機関の診断が請求傷病と異なる場合
ふたつの異なる傷病について相当因果関係の有無が問題となるケースもあれば、初診医療機関では診断がつかず、暫定的な診断(あるいは誤診)となることにより、診断名が異なる場合も多数あります。
たとえば、手や足にしびれや痛みが出て、整形外科を受診したところ、なんらかの整形外科的な診断(たとえば腱鞘炎のような)がつき、その後受診した総合病院で神経性の難病と診断されたというケースについて考えてみます。
この場合、手や足のしびれが請求傷病の初期症状であれば、整形外科を受診した日が初診日となります。
このようなケースで時々、年金機構より「傷病◯◯(整形外科での診断名)と請求傷病には相当因果関係がないため、初診日とは認められません」として訂正を求められることがありますが、ここは相当因果関係云々の問題ではなく、単に「傷病名が確定せず、異なる診断名となっている」ということになります。
社労士 かこ
このような場合、うつ病と不安障害という別々の傷病があって、双方に相当因果関係が認められるのか、うつ病の初期症状が暫定的に不安障害と診断されていた(単に診断名が異なっていた)のか、なかなか判断がつきませんが、いずれにしても、両者はひとつの傷病と取り扱われます。
まとめ
初診日が特定できてはじめて、制度の要件や保険料納付要件を正確に確認することができ、請求の種類なども決めていくことができます。
社労士 かこ
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