治療の副作用も対象になる、がんによる障害年金の受給条件と手続きのポイント

社会保険労務士で産業カウンセラーの加賀佳子(@kako_sr)です。障害年金についての生きた情報をブログでお伝えしています。

がんの症状や、治療の副作用により、障害年金を受給できることをご存じですか?

がんの治療中で、本来は障害年金を受給できるのに、制度をご存じないために(あるいは誤解されているために)請求されていない方は本当に多くいらっしゃいます。そんな方を1人でも減らしたいと願っています。

ハッとした方は、ぜひお読み下さい。

初診日と障害認定日

初診日は、がんと診断された日ではなく、がんによる症状で初めて医師を受診した日です。

たとえば風邪のような症状が続いて内科を受診していたところ、経過の中でがんが疑われ、その後、診断がついたといった場合は、風邪の症状で初めて内科を受診した日が初診日となります。痛みで整形外科を受診していたというケースもわりあいありますし、診療科は初発症状により様々です。

障害認定日は、基本的には初診日から1年6か月が経過した日ですが、咽頭全摘出、肢体の切断、人工肛門を造設した場合などは、初診日から1年6か月前であっても、それらに該当した日(人工肛門造設は造設日から6か月経過日)が障害認定日です。

具体的には以前書いたこちら ↙ の記事のうち、「初診日から1年6か月経過前が障害認定日となる例」をご覧下さい。

障害年金の重要キーワード。障害認定日について

がんによる障害年金の基準

がんによる障害の区分

障害認定基準では、がんによる障害を次のように区分しています。

  1. 悪性新生物そのもの(原発巣、移転巣を含む)によって生じる局所の障害
  2. 悪性新生物そのもの(原発巣、移転巣を含む)による全身の衰弱または機能の障害
  3. 悪性新生物に対する治療の効果として起こる全身衰弱または機能の障害

がんは全身のほとんどの臓器に発生し、全身のどこに、どのような症状があらわれるかは本当に様々ですので、障害年金は、それぞれ該当する部位の認定基準が適用されることになっています。

一般状態区分表と障害等級の例示

原疾患による症状や、化学療法など治療の副作用で、全身の衰弱や機能障害が起こっている場合、その程度を判断するために、次の「一般状態区分表」というものが示されています。

区分一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの たとえば軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力での屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

これに基づいた障害等級の例示は次のとおりです。

障害の程度障害の状態
1級著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のオに該当するもの
2級衰弱又は障害のため、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの
3級著しい全身倦怠のため、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

もちろん、一般状態区分表のみで障害認定されるわけではありません。検査所見や治療内容など、なぜこの区分に該当するのかという「根拠」のようなものが必要です。

診断書のポイントと注意点

使用する診断書の種類

障害年金の診断書は全部で8種類あり、障害の種類や部位により、どの診断書を使うのかが決まってきます。

がんの場合、がんの種類や障害の現れ方によって使用する診断書は様々ですが、特に上記区分の①(局所の障害)に該当する場合は、その部位に対応する診断書を使用します。

たとえば失明であれば「眼の障害用」、咽頭全摘出であれば「音声又は言語機能の障害用」、肢体の切断や脳機能の障害による肢体の麻痺などであれば「肢体の障害用」、器質性精神障害では「精神の障害用」となります。

また、上記区分の②と③(全身の衰弱または機能の障害)に該当する場合、多くは「血液・造血器・その他の障害用」を使用します。

①の障害があり、かつ②か③にも該当する場合は、2枚または3枚の診断書を提出することで、より上位等級となる場合もあります(1枚で1級になるような重篤な場合は1枚で大丈夫です)。

診断書の注意点

特に認定が難しいのは、②と③の場合です。「血液・造血器・その他の診断書」のうち、がんによる障害に関する記載部分は、一般状態区分のほか、次のようになっています。

先ほど、検査所見や治療内容などの「根拠」のようなものが必要だと書きましたが、がんによる障害は、必ずしも検査所見で表せるものばかりではありません。

ですので、自覚症状、他覚所見、その他の検査成績の欄などに、できる限り詳細に記入してもらう必要があります。転移の有無や、衰弱や全身倦怠などの症状が化学療法など治療の副作用により起こっている場合には、その治療内容などについても詳しく書いてもらいます。

また、一般状態区分表について、たとえば本人が1人で通院している場合、「自力で外出できる」という理由のみで「ウ」と評価されることがありますが、ここはあくまでも平均的な状態で評価してもらえるよう、医師に相談してみることが必要です。

たとえば通院のために何日もかけて体調を整えて、どうにか1人で通院し、帰宅後は何もできず寝込んでしまうという方が多くいらっしゃいます。もしそのような状態なのであれば、それを医師に伝えることが重要です。

病歴・就労状況等申立書のポイント

ご本人またはご家族などが作成する病歴・就労状況等申立書には、病状や治療の経過、特にどのような治療を受け、どのような効果があり(あるいは効果がなく)、どのような副作用があるのか、原疾患による病状や副作用により日常生活にどのような支障があるのかを、できるだけ詳しく記入します。

在職している場合は就労の状況(配慮を受けて就労している、休職しているなど)も必ず書いて下さい。記入しなければ、厚生年金の記録から、「就労できている」と判断されてしまう可能性があります。

まとめ

がんによる障害の状態は本当に様々で、全てを書き切ることはとてもできません。

今回は、なにより、目に見えやすい人工臓器などの障害がない場合でも障害年金は受給できること、化学療法や放射線など治療の副作用による症状でも障害年金の対象になることを、少しでも多くの方に知っていただきたいと思い、この記事を書きました。

所得保障である障害年金を受給することで、無理のない働き方を考えたり、治療や療養に専念することができ、より早い社会復帰が可能になる場合もあると思います。

1人でも多くの人に伝わることを願っています。

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