意識ではなく行動を変える!『働き方改革を実現する「会社ルールブック」』の感想

社会保険労務士で産業カウンセラーの加賀佳子(@kako_sr)です。

今回は障害年金の話を少し離れ、社会保険労務士の榎本あつしさんによる『働き方改革を実現する「会社ルールブック」』を読んだ感想など。

本当の意味での「働き方改革」を考える本

企業の経営者や人事担当者などにとって喫緊の課題である「働き方改革」。働く方にとっても大きな関心事となっているのではないでしょうか。

本書では、制度や就業規則の見直しにとどまらない、本当の意味での「働き方改革」を実現するためには、「 行動を変えることが唯一の方法」として、「会社ルールブック」という 具体的なツールを使い、社員の「行動」を 現実的に変える方法論が惜しげもなく紹介されています。

具体的になにをどう変えればいいのかがつかめず困惑している企業にも、制度の改定に向けて着々と準備を進めている企業にも、企業の「働き方改革」を強力にバックアップする立場にある社会保険労務士の方にもお勧めの超良書だと思いました。

変えるのは「意識」ではなく「行動」という視点

「意識改革」という言葉のワナ

本書によると、企業へのアンケートで「働き方改革実現のために最も重要なことはどのような点だと思われますか?」という問いに対し、圧倒的に多かった回答が「社員の意識改革」と「経営者の意識改革」という結果になっているようです。

著者はこれに対し、次のように書いています。

「意識改革をしていこう、と唱えている企業の多くが、現実的には何も進んでいません。何も変わっていません。

”意識が変わったかどうかは、結局「行動」を見ないとわからない。”

これ激しく同意です。実際のところ、「意識改革」という言葉ほど、便利だけれど実現の難しいことって、そうありません。個人レベルで考えてみれば、すごくよくわかります。

たとえばなにかを習慣化したいとき(もしくは良くない習慣をやめたいとき)、「意識を変える」という方法はまず失敗します。だから多くの場合、ツールを使ったり、自分なりのルールを決めるなどの仕組み化をして、少しずつ達成(行動)する。意識はあとからついてくる、あるいは意識は変わらなくても習慣化して行動が変わるというのが実際のところだと思います。

ましてや企業という集団の意識を変えることで組織風土を良くするなどというのは並大抵のことではありません。

ツールとしての「会社ルールブック」

良いルールや望ましい行動を職場に浸透させ、仕組みとしての組織風土を改善していくためのツールとなるのが、著者が推奨する「会社ルールブック」です。

本書で「会社ルールブック」は次のように説明されています。

「会社ルールブック」は、職場で働いている人みんなが守るべきルールをわかりやすく書き記し、手帳のサイズにして、全員に携帯してもらうものです。形としては、社員手帳のようなものをイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。

守るべきルール、前向きに取り組むルールなどをしっかりと明文化したルールブックとして、全員で携帯し、常にそれに目を通しながら、実際に行動していくことにより、よい職場風土がつくられていきます。

とはいえ、ルールブックを作っただけで、それがすぐに職場に浸透したり、行動が変わるわけではありません。

そのため本書では、第3章で社員を巻き込んだ会社ルールブックの「つくり方」、第4章で会社ルールブックの「使い方」が、とても丁寧に解説されています。

また、第6章には充実のサンプルページ。ひな形がWordデータでダウンロードできるようにもなっています。

「働き方改革」の解説も秀逸

第2章は”「働き方改革」とはいったいどういうことか”というタイトルで、「働き方改革」の目的や内容が解説されています。

これがとてもわかりやすい言葉で端的にまとまっているので、「働き方改革」の全体像と、ひとつひとつの改正の概要が、短い時間で把握できます。

随所に図解やまとめもあり、まずはざっくりおさえたいという場合に最適です。

行動科学からの視点

第5章では、ご専門の応用行動分析学の視点から、なぜ会社ルールブックが行動をうながすのかが、理論的に示されています。

この中では特に、次の言葉が印象に残りました。

陥りがちなのが、「自分からやらないと意味がない」として、このようなルールブック(マニュアルなども同様)を否定してしまうことです。

何事にも段階というものがあります。まだちゃんと組み立てられないのに説明書なしでつくらされたり、まだ慣れていない駅で案内板なしで進めといわれても、うまくはいきません。

そしてうまくできないと、やる気がないから、意識が低いから、と目に見えないもののせいにされてしまいます。そうなると、個人のパフォーマンスも落ち、個人が攻撃される職場や組織になってしまのではないでしょうか。

私は障害年金を専門にしているため、発達障害や精神障害のある方と、ほとんど日常的に接しています。「空気を読め」と言われる日本の文化の中で、多くの方が、空気を読めず、あるいは空気を読みすぎて身動きできなくなっています。決してやる気がないわけではなく、意識が低いわけでもないのに、ルールが明確でないから動けないのです。結果、日々叱責され、職場を離れなければならない方も大勢います。

障害の有無に関わらず、ルールが明確になることによって、自信を持って行動できる人は増えると思います。そうすることで、仕事が楽しくなったり、職場の雰囲気が変わるといいなと思います。

まとめ

本のうちのごくごく一部ですが、会社ルールブックがどんどん浸透して、働きやすい職場が増えることを願って、本書を紹介させていただきました。

社労士 かこ

エッセンスだけでも伝わると嬉しいです。この本がたくさんの方に読まれますように。

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