身体の麻痺による障害年金の基準とポイント解説

社会保険労務士で産業カウンセラーの加賀佳子(@kako_sr)です。障害年金についての生きた情報をブログでお伝えしています。

社労士 かこ

今回は、脳疾患や脳外傷、神経系の疾患、脊髄損傷などにより上肢や下肢に麻痺がある場合の障害年金の認定の基準や請求のポイントについて解説します。

身体(上肢・下肢)の麻痺による障害認定の基準

上肢・下肢の障害は、切断などの場合を除き、関節の可動域(他動可動域)または筋力から認定されるのが原則ですが、麻痺の場合、関節の他動可動域からでは障害の状態が認定できません。

そのため麻痺の場合には例外的に、関節可動域ではなく、日常生活動作(ADL)の制限と筋力などから障害の状態が認定されることになっています。また、手指の障害に関しては、握力も重要な指標です。

上肢と下肢に障害がおよぶ場合は、関節可動域、筋力などが考慮されつつ、日常生活動作の制限が認定の中心となりますが、麻痺の場合は関節可動域は考慮されません。日常生活動作と筋力が評価の中心です。

認定の基準は次のようになっています。

上肢の麻痺

手指と上肢で認定の対象となる日常生活動作は次のとおりです。

  • つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)
  • 握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
  • タオルを絞る(水をきれる程度)
  • ひもを結ぶ
  • さじで食事をする
  • 顔を洗う(顔に手のひらをつける)
  • 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)
  • 用便の処置をする(尻のところに手をやる)
  • 上位の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
  • 上肢の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)
MEMO

タオルを絞る、ひもを結ぶ、ボタンをとめるなどの通常両手で行う動作について、片手が不自由なため障害のない側のみで行う場合は、「一人でできるが非常に不自由な場合」という評価になります。

1級の状態

  • 両上肢における日常生活動作のすべてが「一人で全くできない場合」またはこれに近い状態

2級の状態

  • 両上肢における日常生活動作の多くが「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」
  • 一上肢における日常生活動作のすべてが「一人で全くできない場合」またはこれに近い状態

3級の状態

  • 両上肢における日常生活動作の一部が「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」
  • 一上肢における日常生活動作の多くが「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」

障害手当金(症状未固定の場合は3級)の状態

  • 一上肢における日常生活動作の一部が「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」

下肢の麻痺

下肢で認定の対象となる日常生活動作は次のとおりです。

  • 片足で立つ
  • 歩く(屋内)
  • 歩く(屋外)
  • 立ち上がる
  • 階段を上る
  • 階段を下りる

1級の状態

  • 両下肢における日常生活動作のすべてが「一人で全くできない場合」またはこれに近い状態

2級の状態

  • 両下肢における日常生活動作の多くが「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」
  • 一下肢における日常生活動作のすべてが「一人で全くできない場合」またはこれに近い状態

3級の状態

  • 両下肢における日常生活動作の一部が「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」
  • 一下肢における日常生活動作の多くが「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」

障害手当金(症状未固定の場合は3級)の状態

  • 一下肢における日常生活動作の一部が「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」

上下肢の麻痺

1級の状態

  • 四肢における日常生活動作の多くが「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」
  • 一上肢および一下肢における日常生活動作のすべてが「一人で全くできない場合」またはこれに近い状態

2級の状態

  • 四肢における日常生活動作の一部が「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合
  • 一上肢および一下肢における日常生活動作の多くが「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」

3級の状態

  • 一上肢および一下肢における日常生活動作の一部が「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」

平衡機能の障害による障害認定の基準

脳性の疾患により、平衡機能にも障害が起こっている場合、併せて認定の対象となります。

ただし、ここで認定の対象となるのは、疾患部位が小脳や脳幹など、平衡機能に障害が起こる部位である場合のみです。通常、平衡機能障害が起こらない部位の場合には、たとえ診断書に記載されていても、認定の対象となりませんので注意して下さい。

認定の基準は次のとおりです。

2級の状態

  • 四肢体幹に器質的異常がない場合に、閉眼での起立・立位保持が不能または開眼で直線を歩行中に10メートル以内に転倒あるいは著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ない程度のもの

3級の状態

  • 閉眼での起立・立位保持が不安定で、開眼で直線10メートル歩いたとき、多少転倒しそうになったりよろめいたりするがどうにか歩き通す程度のもの

障害手当金(症状未固定の場合は3級)の状態

  • めまいの自覚症状が強く、他覚所見として眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められ、かつ、労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のもの

日常生活動作の評価のポイント

診断書に、日常生活動作について評価していただく次のような欄があります。

このうち、前述した上肢と下肢に関する日常生活動作のほか、下肢に麻痺がある場合は、「立ち上がる」「階段を上る」「階段を下りる」という動作も重要です。

これらの動作は、診断書にも朱書きしてあるとおり、「 補助用具を一切使用しない状態」で評価していただくことになります。仮に、屋内歩行で壁や手すりなどを必要とする場合、壁や手すりは「補助用具」と考えられますので、それらがない状態での評価となる点に注意して下さい。

また、診断書には書かれていないのですが、 「瞬間的に可能でも実用性に乏しい場合」には、その程度に応じて「一人でできるが非常に不自由な場合」または「一人で全くできない場合」となりますので、日常生活上での動作の状態を、医師等に伝えることも重要です。

まとめ

肢体の障害は「目に見えるのでわかりやすい」と思われがちですが、切断や完全麻痺などの場合をのぞき、じつはとてもわかりにくいです。

不支給になったとか、思っていたより軽い等級に認定されたといった相談を受けた場合、診断書を見せていただくと、日常生活動作の制限が、実際の状態より軽く評価されているということも多くあります。

診断書を受け取ったら必ず確認し、ご自身が日常生活の中で感じられている不自由さと大きく違うと思われる場合は、医師に相談してみることも必要です。

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